「波及」とは
FXのチャート分析をする時に「波及」という概念をお持ちでしょうか?
「波及」という言葉で認識していなくても、同じような感覚を持ってチャート分析をしている人も多いとは思いますが、一度この「波及」という概念を整理しておくと、チャートの見え方が違ってくるかもしれません。
一般的に「波及」とは、「ある一点から波が広がるように大きく影響が段々に他に及ぶこと」ですね。
FXでは「小さな時間足から大きな時間足へと影響が及ぶこと」を指して、基本的には「トレンド転換」の時に使われたりします。
簡単に説明すると、トレンド転換は必ず小さい時間軸から段階的に発生するということです。
ここでは、トレンド判断をダウ理論ベースで考えてみます。
まずは、もの凄く簡略化した概略図で見てみましょう。
上の画像では、ピンク色→青色→緑色の順番に波の時間軸レベルが大きくなっています。
上の画像の様に、波がサポートに到達して波が反発していった時など、必ず順番としては小さい時間軸の方から「反転」の判断のタイミングが訪れることになります。
上の画像の例で言えば、絶対に青色の波がピンク色の波より反転の判断が先になることはないし、緑色の波は青い色の波に対して同様です。
物理的にありえないということですね。
さて、上の画像は簡略し過ぎています。
実際には、それぞれの時間軸レベルの影響があって、もう少し複雑な波の形になります。
上の画像のように、結局緑色レベルの波まで反転が波及するとしても、多くの場合はそれぞれの時間軸レベルでの戻り売り勢力が入ってきたりして、複雑な波の形になったりします。
もちろん、トレンドのモメンタムが強い時には、「一気」という形もあります。
ですが、多くの場合は「逆目線」側にもある程度勢力が存在しますので、上の画像のように、逆目線側の勢力を受け止めるような形で波は伸びていきます。
という事は、当然下の画像のような展開もありえるわけです。
サポートに到達して反発してきた勢力によって、ピンク色の波が反転して、青色レベルまでは影響が波及してきて、反転しています。
ですが、緑色レベルの波を反転させる程までは波及せずに、緑色レベルの戻り売り勢力によって、下降推進波が本格化して、サポートを下抜ける展開でした。
つまり、「波及が途中で止まる」という現象も当たり前ですが、日常茶飯事のように発生しています。
「波及」について、別の見方をしてみます。
上の画像において、「M1」「M5」「M30」「H4」は時間軸レベルであり、右にいくにつれて大きな時間軸レベルになっています。
上から下へ時間経過を示していて、ピンク色の〇印は、その時間軸レベルで「トレンド転換」があったという意味です。
さて、最初はH4まですべて下降トレンドの状態ですね。
そこから、M1レベルにおいてトレンド転換が発生します。
ということは、波が少なくともM1レベルの波の反転を起こすだけの「サポート」に到達したということが、ピンク色1番の〇印から分かります。
次に、M1レベルの波の反転が波及してM5レベルの波も反転しました。さらに、M30レベルまで波及して波の反転が起きます。(2番・3番のピンク色〇印)
この時点で、「サポート」はM30レベルの波を反転させる強さを持ったサポートだということですね。
ですが、ここからH4レベルには波及せずに、M1レベルにおいてトレンドの転換が起きます。(4番のピンク色の〇印)
そして、このM1レベルの波の反転はM5・M30レベルへと波及していきました。(5番・6番のピンク色の〇印)
つまり、「サポート」での反発はM30レベルまでしか波及せずに、H4レベルの戻り売り勢力によって、また下降波が本格化したような展開が想像出来ますね。
上の画像だと、「下降が上昇に転じる時」も「上昇が下降に転じる時」も、同じように「左側から右側へ」と波及していきます。
つまり、「波及は必ず小さい時間軸から大きい時間軸へと起きる」ということですね。
そして、チャートポイントの強さによって「波及が届かない」という現象が起きるということ。
「波及が届かない」時には、やはり波の転換は小さい時間軸から発生して、大きい時間軸へと波及していきます。
4番や5番のピンク色〇印の反転が発生している時などは、一時的に「下降・上昇・下降」のように、トレンド状況が「挟まっている」のような状態が発生することがあります。
これは、実際にはもっと複雑に「下降・上昇・下降・上昇・下降」のようだったりもします。
このような場面は、FXをトレードする上で難しい場面になることが多いです。
ですが、こういった複雑な場面も実は、大きな時間軸の力によって、下の時間軸から波及してきている途中の場面だったりします。
大事なのは、チャートのフラクタル構造(用語解説)を意識して、統合的に判断することです。
各時間軸のトレンド状況を「静止画」のように捉えるのではなくて、常に「波及」を意識することで、どのように移り変わっていくのかをイメージするようになると思います。
FXチャートはある意味では「生き物」なので、各時間軸は常に力を及ぼしあっているという感覚です。
その結果として「波及」という現象が発生します。
「波及」が届かないというのも、より大きな時間軸の「力が及んだ」結果だったりします。
まとめ
FXチャートを分析する時には、ぜひ意識したい「波及」という概念。
② 「波及」が届かないという現象が発生する
③ 各時間軸のトレンド状況が複雑な状態は、「波及」の途中の場面だったりする。
「波及」という概念を持って、チャートを見ると各時間軸の間が力を及ぼしあっている関係性だったり、「動き」のイメージが出てきます。
どうしても、マルチタイムフレーム分析(用語解説)という概念を勉強したばかりの人だと、各時間軸ごとのトレンド判断をして、「下位時間軸は下降トレンドで、取引時間軸は上昇トレンドで、上位時間軸は上昇トレンド」という情報のみでイメージが止まってしまいがちです。
「どうして、そのトレンド状況になっているのか?」「どういった力が及んでいる状況なのか?」「どこまで波及しそうなのか?」という感じで、チャート分析を深堀り出来るようになると、各時間軸のチャート分析に繋がりが出てきます。
この「繋がり」がマルチタイムフレーム分析では重要なんですね。
その為には、チャートのフラクタル構造をしっかり理解していないといけなかったり、チャートポイントのレベル感という概念だったりと、色々な知識も必要ですが、まずは「波の反転は小さい時間軸から大きい時間軸へ波及する」というイメージを持つだけでも、違ってくるのかなと思います。
そうすると、自然と「じゃあどこまで波及するのかな?」という疑問が湧いてきたりします。
その為にはさらに上位のチャートを見ないといけないという環境認識(用語解説)の重要性にも繋がっていきます。
FXのチャート分析における概念の1つを取り上げてみると、結局「環境認識」「マルチタイムフレーム分析」といった重要な要素と繋がってたりします。
それは、自分のチャート分析をしやすくする為のイメージ化だったりもしますが、そういった概念を改めて自分の中で整理してみるだけで、チャート分析の仕方が自分なりに明確化したりしますので、ぜひしっかりと理解してみてください。