「分割決済」のメリット
FXのトレードは色々と難しい要素がありますが、その中でも難しいと言われているのが「決済」についてですよね。
毎回、最適な決済をすることはFX上級者でも至難の業です。
基本的には、環境認識に基づいてどこまで伸びるかという予測を基に、チャートの形の変化などで臨機応変に決済したりしますが、利益を最大化する決済というのは難しいものです。
なので、自分のルールを決めておいて、それに従って機械的に決済をするという人も多いと思いますが、その時のチャート分析に基づいて臨機応変に決済しようとすると、悩ましい場面というのがあると思います。
そんな時の解決案というのが「分割決済」なんですね。
例えば、こんな場面。
手前のレジスタンスで少しは反発があるかもしれないけど、上のレジスタンスまで伸びていくという自信が強い時には、上のレジスタンスまでホールドで問題ないです。
ですが、上のレジスタンスまで伸びていくだろうという予測に自信はあるのだけど、手前のレジスタンスでの反発も怖いな、、、という微妙な場面もありますよね。
そんな時に「分割決済」です。
手前のレジスタンスで半分だったり、1/3だったりと、持っているポジションを分割して決済しておくんです。
そして、上のレジスタンスまで無事伸びてくれれば、そこで残りを決済します。
これが、分割決済の基本的な流れです。
分割決済をするメリットとしては、不安があった通り、手前のレジスタスでの反発が予想より大きく安値を割ってしまうような展開だった時も、分割決済した分の利益は確保しているので、場合によってはトータルで利益で終われたりします。
上のレジスタンスまで到達するという予測が外れてしまっていても、トータルで利益が残るというのは、分割決済のメリットですね。
もちろん、上の画像のようなケースでトータルで利益が残るかどうかは、分割決済のタイミングや割合にもよります。
ですが、分割決済をした時点で、そこまでの予測は当たっていたわけです。
つまり、その予測が当たっていた部分に対しての報酬という感じで、ある程度の利益を確保しておけるというのが分割決済のメリットなんですね。
逆に、分割決済をしなかった場合、そこまでの予測が当たっていた分がもったいなく感じることもありませんか?
手前のレジスタンスまでの伸びる予測は当たっていたので、それまでは含み益が発生しています。
ですが、分割決済をしていなかった場合にそこから反転してしまい、損確になってしまうと、含み益は全部無くなって、予定していた損失100%が発生します。
上のレジスタンスまで伸びるという予測は当たらなかったけれど、途中のレジスタンスまでの予測は当たっていたのに、その分も無くなってしまって、悔しい、、、、
もちろん、どんな決済方法であれ、FXのトレードではこのような事は発生します。
ですが、手前のレジスタンスでの反発がある程度予測される時には、「リスク管理」として分割決済をするというのは、理にかなっているとも言えますよね。
分割決済をしておけば、予測が当たっていた分と予測が外れてしまった分とを別にして、利益を確保出来るというのがメリットなわけです。
FXのチャート分析はデジタル的に表せるものではありませんが、もしも下の画像のようなイメージであった場合、その期待値に応じて、ポジションを管理出来るというのが、分割決済のメリットです。
上の画像であれば、手前のチャートポイントに到達した後に、損確を割らずに上のレジスタンスに到達出来る確率(予測)が70%であり、残りの30%の確率で上のレジスタンスに届く前に損確を割ってしまうとするなら、30%分のポジションを分割決済しておく。
これが、期待値に応じたリスク管理ですね。
もちろん、チャート分析による予測は、このようにきっちり数字で表せるものではありませんよね。
なので、大雑把には「自信をトレードに反映させる」ということです。
手前のレジスタンスが少し怖ければ、少し分割決済しておく。
手前のレジスタンスが結構怖ければ、結構分割決済しておく。
もちろん、手前のレジスタンスが全然怖くなければ、分割決済をせずに上のレジスタンスまですべてのポジションを持っておく。
という風に、チャート分析による「自信」をトレードに反映させて、より精細なトレードが出来るというのが分割決済のメリットなんですね。
また、分割決済のメリットとしては、「精神負担が軽くなる」というのがあります。
これは、半分だったり1/3だったりと部分的とはいえ分割決済をして利益を確定させたことによって、もしも残りのポジションが上手くいかなくても、大きな損失が出ないばかりか、上手くいけばトータルで利益が出るという風に感じられることで精神負担が軽くなるわけです。
すると、残りのポジションに関しては、利益を確保したという気持ちのゆとりから、ゆったりと利確を伸ばしたりなんかも出来たりします。
なるべく利を伸ばしてから決済をしたいですが、せっかく大きくなった含み益がなくなってしまうのも怖いですよね。
ですが、部分的でも分割決済をして利益を確保しておくことで、精神負担が軽くなって、意外と残りのポジションをゆったりと構えられるようになったりします。
もちろん、これはどこまで伸ばすのが良いかというチャート分析次第ではありますが、伸ばした方が良いと分かっているのに、含み益を失うのが怖くなって、手前で全部決済してしまう人なんかには、解決案の1つになるのではないでしょうか。
「分割決済」のデメリット
さて、「分割決済」にはもちろんデメリットもあります。
まず、細かいデメリットとして「考え方」「作業」が煩雑になるというのがあります。
当たり前ですが、分割決済を考えることによって、考えることやFXトレードツールの作業ですることが増えますので、ミスを誘発する可能性があります。
ですが、このデメリットに関しては慣れればよいので、そこまで大きなデメリットではありません。
分割決済を導入することの大きなデメリットとしては「精神負担を軽くする為に逃げがちになる」というものです。
別の記事にも書きましたが、人には「プロスペクト理論」で説明されるような心理作用が働きます。
簡単に説明すると、人は「損確はずるずると伸ばしがちで、利確はすぐに切ってしまいがち」という癖があるということですね。
すべての人には当てはまらないかもしれませんが、心当たりがある人がほとんどではないでしょうか。
ポジションを持っていて、含み益が大きくなっていると、利確目標に届く手前あたりで「もしここから反転していってしまったらどうしよう?」と不安になりますよね。
また、含み損が出ている時は「ここからなんとか反転していってくれないかな」と期待してしまいますよね。
なので、人はFXにおいて「感情」をトレードに乗せてしまうと「損失を大きくしてしまい、利益を小さくしてしまう」傾向があるということです。
ここで「分割決済」です。
分割決済というは、自分のチャート分析の自信をトレードに反映させることが出来るというメリットがありますが、その反面として「感情」をトレードに反映させてしまうデメリットもあるということです。
目の前に「分割決済できる」という選択肢があり、「安心したい」という感情に流されてしまうと、必要以上に多くのポジションを分割決済してしまうという状況を誘発してしまうかもしれません。
結果的に自信のあるチャートポイントまで価格が伸びたとしても、到達したポジションを小さければ利益がだいぶ減ってしまうということになってしまいます。
そのポジション量が自信に見合っているものであれば、理にかなっていますが、プロスペクト理論に陥って分割決済ポイントで多くのポジションを手放してしまうということが度々あると、結果的に利益を減らしていることに繋がってしまうというのが分割決済のデメリットですね。
分割決済のデメリットによる利益の減少がどのくらい起きているのかというのは、自分の予測と実際のチャートの結果をデータに取って評価することで確認することが出来ます。
分割決済を多目にしてしまったけど、自分が予測していたチャートポイントまで結果的には価格が伸びたというパターンの割合や、分割決済をしておいて助かったというパターンの割合などをデータで把握することが大事ですね。
チャート分析による予測・自信を数学的にきっちり表すことは難しいので、ある程度大雑把な分析にはなりますが、「安心したいが為に多くのポジションを分割決済したことが利益を減らしてしまったな」というパターンがどのくらいあるかを把握することは大事かもしれません。
この辺は、データで見た方が確実ですが、感覚的にも自分の中に積もっているはずです。
「あー、さっきの所でやっぱり分割決済し過ぎたなぁ、こっちのチャートポイントまで伸びると思ってはいたんだけどなぁ」
このような経験を度々している場合は、分割決済のメリットを活かしきれずに、プロスペクト理論に陥りやすくしているというデメリットの方が大きい状況と言えますね。
このようなトレード状況の場合は、「もっと自分のチャート分析通りにポジションを持っていいんだな」とデータとしても確認することで、プロスペクト理論に陥らずに冷静にトレードすることが出来るようになるかもしれません。
まとめ
FXのトレードにおいて難しいとされる「利確」の判断。
自分のチャート分析の自信をトレードに反映させることで、より精細なトレードが出来るようになるという「分割決済」のメリット。
また、少しでも分割決済をしておくことで、利益を確保したと感じて、精神負担が軽くなり、残りのポジションについてはゆったりと構えることが出来るようになるというメリットもあります。
ですが、「精神負担を軽くする」というのは「甘い誘惑」でもあります。
人によっては安心したいが為に必要以上に分割決済をしてポジションを小さくし過ぎてしまい、結果的に利益を減らしてしまいがちになるというデメリットに働く可能性もあります。
分割決済をすることのメリットが大きいのかデメリットが大きい状況なのかは、自分の予測とチャートの実際の結果などのデータを取って評価することでも確認が出来ますのでおすすめです。
データを取らなくても「あー、また分割決済し過ぎて、予測通りのチャートポイントまで到達したのに、利益が小さくなってしまった、、、」なんて経験が多ければ、自分でもなんとなく気づいていると思います。
論理的に考えればこうするべきなのに、、、と頭では分かっていても、プロスペクト理論に陥って変な所で決済してしまうというのは、FXあるあるですよね。
たしかに分割決済を導入することで、プロスペクト理論を助長するデメリットはありますが、上手く使いこなすことで自分のチャート分析に対する自信をより精細にトレードに反映することが出来るようになります。
もちろん、はっきりと「ここまで全部のポジションを持つべき」という自信がある場面であればよいですが、微妙な判断を求められることが多いのがFXですよね。
なので、プロスペクト理論に陥らずに、分割決済のメリットを活かしたトレードが出来るようになれば、それだけでトレード成績が向上する可能性も秘めています。
今まで分割決済という考えがなかったり、試したことがないという人はぜひ一度取り組んでみてはいかがでしょうか。