「推進→調整」のリズム
FXのチャートを論理的に分析するにあたって、必要な知識や概念が色々存在します。
その中の1つに「推進と調整」という概念があります。
元はエリオット波動をベースにした考え方で、本来は「修正」というワードかもしれませんが、「調整」の方がしっくり来るので、ラプラスFXでは「調整」と呼んでいます。
この概念をまずは簡単に説明します。
FXの通貨ペアの価格は「多数決の原理」で動きます。
例えば「価格は上昇する」という考えの相場参加者が多数派であれば、注文の量に反映されて価格は上昇するということです。
このような「価格は上昇する」という考えが多数派である状況を「上昇トレンド」と呼ぶことも出来ますよね。
上昇トレンドであっても、一直線に価格が上昇していくのではなく、「推進」と「調整」を繰り返しながら波は進んでいくという考え方です。
では、なぜ「推進」と「調整」を繰り返すのか?そもそも「調整」って何?って感じですよね。
まずは、下の画像を見てください。
価格が上昇すればする程、含み益を抱えた人がある程度発生します。
すると、そんなトレーダーの中から「そろそろ利確して、含み益を確保しよう」という考え方をする人が増えます。
この「利確」するという行動は、「売る」という行動ですよね。
利確する人が増えるということは、「売り注文」の量が増えるということです。
そして、この「利確」の「売り注文」の量が増えるタイミングにあわせて、「新規の売り」を考える人も現れます。
もちろん、これも「売り注文」ですね。
こういった「売り注文」がある程度増えて、本来の上昇トレンド中の「買い注文」の量を一時的に上回ってしまうと、価格が一時的に下降します。
これが「調整」です。
この動きを「調整」と呼ぶのは、あくまで「一時的に価格は下降してはいるが、この後も価格は上昇していくという見方が本筋」という背景があることが前提です。
この結局は上昇していくという背景があるから、「調整」で一時的にある程度価格が下がると、やっぱり買いたい人がまた増えてくるんですね。
「結局、価格は上昇していく」という流れが本筋であるなら、また「伸びしろ」が出来れば、「買い注文」が集まり、また多数決のバランスが変わって、上昇が再開します。
そして、そもそも上昇トレンドという背景の中では、「買い注文」が集まる力の方が大きいので、「調整」の時の一時的な下降とは違い、価格が上昇するのは「本命」なので、価格の上昇にも勢いが出ます。
なので、トレンドにおいて「本命」の方向に勢いよく伸びるのが「推進波」ということです。
このように、価格が動くことによって、相場参加者の思惑が働きながら、「推進→調整→推進→調整・・・」というリズムで価格はトレンド方向へ進んでいきます。
リズムが変わるタイミング
さて、「推進→調整」のリズムが分かった所で、こんな疑問が湧きませんか?
「推進→調整→推進→調整→推進・・・」って、このままじゃ価格が一方向にだけ伸び続けてしまうけど、実際のチャートはそうなってないぞ!?
そうなんです。この「推進→調整」のリズムは永久には続きません。
変化するタイミングがあるんですね。
まずは、「上昇トレンド」の様子を見てみます。
このように、「上昇推進波」と「下降調整波」を繰り返しながら、価格が上昇していきます。
そして、推進波から調整波に切り替わるところには必ずチャートポイントが存在します。
上の画像では「上昇推進波」から「下降調整波」に切り替わるところにレジスタンスがあることが描かれていますが、下降調整波から上昇推進波に切り替わるところには、サポートが存在します。
さて、ここで「推進→調整」のリズムが変わるタイミングがあります。
それが「上位のチャートポイント」に到達したタイミングですね。
今までのレジスタンスでは一時的な「調整」を生むだけのレジスタンスでしたが、上位のレジスタンスに到達するとなると、大きく「背景」が変わる可能性があります。
もちろん、その上位のレジスタンスの注目度にもよりますが、この上昇トレンドの波レベルよりも上位レベルのチャートポイントであれば、この時間軸レベルにおいて多大な影響を及ぼす可能性があります。
「背景」が変わるというのは、言い換えると「条件」が変わるという感じですね。
つまり、今までの「条件」であれば「価格は上昇する」と考えていた相場参加者が多かったから「上昇トレンド」だったわけです。
ですが、「上位のレジスタンス」に到達して「背景」つまり「条件」が変わると「その条件だったら、価格は下降する」と考える相場参加者の多くなる可能性があるということ。
このように、考える人にとって波は上の画像のような認識になります。
上位のレジスタンスまでは「上昇トレンド」という認識なので「上昇推進波」ですが、上位のレジスタンスに到達後は下降が「本命」になりますので、「下降推進波」になるという感じです。
「推進→調整」のリズムが「推進→推進」にリズムが変わるタイミングです。
ですが、「車は急に止まれない」のと同じで、多くの場合トレンドも急に転換しません。
上位のレジスタンスに到達しても、それまでは「上昇トレンド」であったわけですから、「価格は上昇する」という考えが多数派だったという事実があります。
その多数派の人達全員の考えが同時にすべて変わるわけではありません。
また、レジスタンスに到達しても「上位のレジスタンス・強いチャートポイント」という認識をしていなかったりもします。
なので、レジスタンスに到達後の下降波を「下降調整波」と考える人も残っている場合も多いんですね。
上位のレジスタンス到達後の下降波を「下降調整波」と見ている人は、この後も上昇トレンドが継続すると考えている人達。
上位のレジスタンス到達後の下降波を「下降推進波」と見ている人は、この後はトレンドが転換して下降トレンドが発生すると考えている人達。
大きく分けてしまうと、この2つのグループの見方が混在することになります。
すると、この後の展開としてよくあるのが下の画像のような展開ですね。
上昇波が発生したとしても、上の画像の通り、どちらの見方でも「不自然ではない」状態なんですね。
下降トレンド転換で見ている人からすると、下降トレンド中の「上昇調整波」であって、上昇トレンド継続で見ている人からすると、押し目買いが入って「上昇推進波が再開するかな?」という感じです。
もしサポートを下に抜けたとしても、まだどちらの見方も出来る状況だったりします。
まだ本命のサポートがある場合には、「再調整」の展開が残っているので、上昇トレンド継続中と見ることが出来ます。
実際、この波レベルにおいてダウ理論ベースで判断した時には、まだ上昇トレンドなわけですから、本命のサポートではしっかり「押し目買い」が入ってきたりします。
ですが、本命のサポートで押し目買いが入っても、下降トレンド転換派からしても、また上昇調整波が入ったという見方であって、むしろレジスタンスに引きつけて戻り売りが入ってきたりします。
そして、それまでの上昇トレンドのダウ安値を下抜けた時に、上昇トレンド継続派の人達は、自分達の見方が「少数派」であったことに気づきます。
もちろん、この辺りの展開は環境次第で様々なパターンが存在します。
その中では、途中の展開で「上昇トレンド継続しないかも?」と気づく「材料」が見えることもあり得ます。
遅くとも、ダウ理論ベースであれば、ダウ安値を下抜けた時に上昇トレンド継続派の人達も気づくということですね。
もちろん、上位のレジスタンスの力が弱ければ、上昇推進波が再開して、上昇トレンドが継続する、つまり「下降トレンド転換派」の人達が少数派だったということもあります。
ですが、トレンド転換は必ず「推進→推進」と見立てる人達が発生することから始まるということです。
そして、それまでのトレンドが継続する、つまり「推進→調整」と見立てる人達との攻防という構図になりがちです。
その多数決のパワーバランスによって、様々なチャートの形になりますが、拮抗する時には「持合い」の形になったりするわけなんですね。
まとめ
FXのチャート分析において、重要な「推進と調整」という概念。
トレンドは「推進→調整→推進」というリズムで価格が伸びていく。
ですが、上位のレジスタンスに到達したなどの「背景」の変化によって、「推進→推進」と見立てる人達が現れることによって、トレンド転換の展開が始まります。
今回の記事は、「推進→調整」のリズムに変化が発生する場面についてフォーカスして書きましたが、この記事からもチャート分析の基本が「トレンド(波の流れ)」と「チャートポイント(波止場)」の把握であることが分かるかと思います。
期待値の高いトレードをする為には、このトレンドとチャートポイントをいかに精度よく把握して、それらをマルチタイムフレーム分析(用語解説)をすることにより統合的に判断して、トレードプランを立てる必要があるということです。
また、今回の記事において参考になるポイントとしては、「逆目線」ですね。
自分の主観だけでチャートを見るのではなく、「他の相場参加者はどう考えているだろう?」「自分の逆のポジションを持っている人はどう考えるだろう?」という視点が精度の高いチャート分析には必要になってきます。
色々な思惑が入ってくるので、チャートの形は複雑になります。
その複雑な形のチャートを分析する為には、他の相場参加者の心理を考える「想像力」がとても大事なんですね。
FXはいわゆる「空気が読めない人」には向いていないと思います。
そんな人のトレードは負けた時、「なんでここで下がるの?絶対に上昇トレンドじゃん?」みたいな感じだと思います。
FX上級者の人はトレードに負けたとしても「そっち側で考える人が今回は多かったか~」という感じです。
負けたとしても、負けた要因を事前に把握しています。
負けた要因を過小評価していたことが敗因ですが、それは「期待値」という観点で問題なければ、負けトレードも「必要な費用」なわけです。
なぜ負けたのか?を振り返れるようにならないと、FXのトレード技術の向上はなかなか望めません。
その為にも、自分の考え以外にも視点が向くような想像力が重要です。
日頃の生活からも、他人の気持ちを想像する優しさを持つことが、FXのトレード技術を向上させるコツだったりするかもしれませんね。