「両建て」とは
FX業者によっては、「両建て」というポジションの建て方が出来ます。
「両建て」というのは、例えばある通貨ペアですでに「買い」ポジションを持っていたとしたら、このポジションを決済することなく、「売り」ポジションも持てるという仕組みです。
すでに「売り」ポジションを持っている場合の両建ては、追加で「買い」ポジションを持つことですね。
つまり、同じ通貨ペアの「買い」と「売り」の両方のポジションを同時に持つことを「両建て」と言います。
さて、「両建て メリット」なんて検索するとFXで両建てすることのメリットを書いた記事がいくつも出てきますが、、、
個人的には正直「本当にそれってメリットなの!?」と疑問に感じるものばかりです。
今回は、メリットとされている両建ての使い方をいくつかピックアップして、本当にメリットなのか?を考察してみたいと思います。
「リスクヘッジ」って意味あるの?
「両建て」のメリットとして、よく書かれているのが「リスクヘッジ」です。
価格が上昇すると思って買いポジションを持っていたけれど、その後の値動きが不透明になってしまった時などに買いポジションと同じロット数の売りポジションを持って、両建てをしておくことで、価格が上がっても下がっても、相殺されて損失が出ないよう「リスクヘッジ」が出来るのが両建てのメリットらしいのですが、、、
たしかに、買いポジションと売りポジションを同じ量だけ両建てすれば、価格が上がっても下がっても、互いのポジションの「含み益」と「含み損」が相殺しあって、利益も損失も出なくなるのですが、、、そもそもポジションを決済すればよくないですか?
上の画像の例であれば、両建てしなくても買いポジションを決済してノーポジションにすれば、価格が上がっても下がっても利益も損失も出なくなります。
というか、論理的に考えても「値動きに自信が持てなくなった」のであれば、そのように判断した時点で「決済」するのが冷静な判断ですよね。
両建てした場合、判断を先送りにしたに過ぎないですよね。
結局、「両建て」をいつか「解除」する判断をしなくてはいけません。
その時に改めてポジションを持つのと同じことなんですよね。
両建ての内、「買い」ポジションを残すという行為は、そこからリスクヘッジが終了して買いポジションだけ持っている状態にするということですから、改めて「買い」ポジションを持つことと同じです。(※「売り」も同様ですね)
両建てした場合と、両建てない場合の違いは下の画像の通りです。
両建てのメリットというか目的が「リスクヘッジ」であるのであれば、ポジションを決済することでも達成できます。
また、両建てを解除する判断は、同じタイミングで新規でポジションを持つことと同じなんです。
むしろ、両建てしてしまうことで、この後の展開で必ず2つのポジションの決済をする必要性が生じます。
両建てをせずに、ポジションを決済しておけば、この後の展開次第では「ポジションを持たない」という選択肢もあります。
そもそも、両建てしてしまう程値動きが予測できなくなってしまった状況ですよね?
無理にその展開からトレードを続ける必要性がありますか?
もちろん、両建てした後もどちらのポジションも同時に決済すれば、「トレードしない」という選択をしたことになりますが、その場合は単純に両建てのスプレッド費用分だけ無駄ですね。(※FX業者によります)
なので、「リスクヘッジ」という目的・メリットで両建てをするのは、ほとんど意味が無いのでは?と個人的には思います。
レンジ相場で「両建て」?
レンジ相場で「両建て」することで、どちらに価格が進んでも利益を上げることが出来るのがメリット??らしいのですが、、、
そのからくりは、こんな感じらしいです。
サポートで反発した時に「両建て」しておき、レジスタンスに到達した時に「買い」ポジションの含み益だけ決済しておく。
そして、この含み益の分だけ「売り」ポジションにも損確注文を入れておけば、仮にレジスタンスを抜けていってしまっても、最悪損失になることはなく、サポートまで下がってうまく売りポジションを建値決済出来れば、「買い」ポジションの利益分だけ儲かるらしいのですが、、、
これは、完全に見落としてしまってますよね?
「買い」ポジションのみ決済して、含み益を確保した時点で、「売り」ポジションはしっかり同じ金額分の含み損を抱えているんですよね。
なので、レジスタンスを抜けていってしまったら、逆行した分だけちゃんと損失が発生して残ります。
というか、このサポートで両建てしてからレジスタンスで「買い」ポジションのみ決済する行為には本当に意味が無くて、ただ新規で売りポジションを持ったのとまったく同じことですよね。
「両建て」をしている間は、損失も利益も出ません。
なので、両建てを解除して、どちらかのポジションを残した時に初めて、損失と利益の増減が始まります。
つまり、両建てを解除して「売り」ポジションを残す行為と、新規で「売り」ポジションを建てる行為は同じです。
上の画像の例で最初から「両建て」をしている意味は何もありません。
ノーポジションと同じです。
むしろ、スプレッド費用分無駄なのかなと。
両建ての本質は「ノーポジション」と同じです。
「長期」と「短期」の併用??
さて、今までの「両建て」は基本的に同じ時間軸のトレードにおいての話だったので、両建てのメリットは個人的には本当に見出せません。
もしも、ほんの少しでも両建てのメリットを見いだせるとしたら「長期」と「短期」の併用です。
これは何かと言うと、長期的には通貨ペアの価格が上昇すると予測して「買い」ポジションを持っている時に、短期的には価格が下降すると予測出来る時に、両建てをすることで、短期のトレードも同時に行うというものです。
さて、ここで前提条件の話ですが、短期トレードが両建てになる場合、長期トレンドに逆らったトレードになるということですね。
それでも短期トレードをしようということなので、「長期トレンドに逆らっているのは承知だが、それでも期待値の高いトレードが出来る程、短期の値動きの予測に自信がある」ということになります。
では、単純に考えるとそれならやはり「両建て」せずにポジションを決済して、新規でポジションを持てば良いのでは?という考えがありますよね。
本来、「両建て」と同義になるのは「ノーポジ」ですが、その比較は上記の通り終わってますので、短期的予測に基づく「両建て」と「トレード」を比較してみます
短期も長期も同じロット数でトレードすると仮定して、単純に獲得PIPS数で考察してみます。
まずは、「両建て」する場合。
短期利益「50pips」と長期利益「100pips」を合わせて「150pips」の利益です。
同じ場面で、両建てせずにトレードした場合。
短期利益「50pips」と長期利益①「70pips」と長期利益②「80pips」を合わせて「200pips」の利益です。
当たり前といえば当たり前ですが、やはり両建てせずにトレードをした方が利益は大きくなります。
なぜなら、何度も書いていますが、両建ての本質は「ノーポジション」と同じであり、その間は利益も損失も生まないからですね。
両建てするというのは、「トレードしない」のと同じなわけです。
では、なぜ今回の話であれば、少しは両建てのメリットが見出せるのか?
長期的な目線に逆らってでもやった短期トレードが失敗に終わるパターンを見てみます。
まずは、両建てした場合。
短期的な目線でトレードをしたけれど、上手く利確出来ずに結局損確になった場合ですね。
短期損失「-10pips」と長期利益「100pips」を合わせて「90pips」の利益です。
両建てをしなかった場合。
短期損失「-10pips」と長期利益①「60pips」と長期利益②「30pips」を合わせて「80pips」の利益です。
短期トレードが上手くいかなかった場合は「両建て」しておいた方が良かった、この比較においては両建てにメリットがあったとは言えます。
ただし、まとめると「長期に逆らった短期トレード」が上手くいった場合は「両建て」しない方が利益が多くなり、上手くいかなかった場合は「両建て」した方が利益が多くなるわけです。
自分がポジションを持つ程、波の予測に自信がある長期に対して、逆らった短期トレードを10回やったとします。
この10回の短期トレードのトータルがプラスであれば「両建て」しない方が良かったわけで、もしもトータルがマイナスであれば「両建て」してた方が良かったということになります。(※厳密には両建てする方がスプレッド費用がお得な要素がありますが、為替差損と比べてとても軽微な場合を想定します)
つまり、「両建て」にメリットを感じてしまっているということは、そもそも「長期目線でポジションを持っている中、逆らってまでやる短期トレードの期待値は高まっているのか?」という前提条件を揺るがす状態なわけなんですよね。
もちろん、長期と短期の時間軸の乖離具合や、そもそものトレード手法によるところもありますが、「両建て」が持つ本質が「ノーポジション」である限り、同じように作用するはずです。
つまり、期待値の高いトレードが出来ているという前提条件であれば、やはり「両建て」にメリットはほとんど無いということになります。(※厳密にはスプレッド費用分はありますが、、、)
まとめ
今回は、FXトレードにおける「両建て」のメリットについて考察してみました。
「両建て メリット」等のワードで検索してみると「両建て」をおすすめする記事がたくさん出てくるので、読んでみるとその内容は結構「???」な感じです。
上にも書いた通り、両建ての本質は「ノーポジション」です。
つまり、「トレードをしない・ポジションを持たない」という判断・行為と同じ状態ということ。
なので、特に同じ時間軸レベルのトレードプランにおいて「両建て」を組み込むメリットはほとんど皆無と言えますし、複数時間軸にまたがった場合でも「期待値の高いトレードが出来ている」という前提であれば、やはりメリットはほとんど無いと言えます。
細かい点でいえば、自分の思考が混乱するのを防ぐとか、注文を出す作業の煩雑さの解消という意味では両建てのメリットはあるのかもしれませんが、、、トレードで得られる利益の期待値を落としてまですることなのかは、やはり疑問です。
また今回は通常のトレードにおいて考察しましたが、特殊な両建ての活用法として「アービトラージ」や「重要な経済指標発表時の両建て」などの考察はしてません。
まあ、重要な経済指標発表時に両建てしておく方法に興味があれば、調べてみても良いと思いますが、個人的には「トレード」と呼べるものではなく、「ギャンブル」の領域だと思います。
「アービトラージ」も「トレード」という認識ではありません。
なので、FXトレードという範疇では「両建て」をするメリットは基本的には無いのかなというのが個人的な見解です。